スキャナー 記憶のカケラをよむ男
2016.05.07 14:10
AC スクリーン8
自分を甘やかそう企画第2段。
立て続けに2本目を見る。
ブログのタイトルにもした柚子ジンジャーソーダ420円を購入。
さて、率直な感想を書くと、いまいち乗れなかった。
音楽学生・亜美(杉咲花)に対する担当教員・雪絵(木村文乃)のセリフ、
「あなたには才能があるんだから」
これにどうしても拒否反応が出てしまった。
作中で本当に何度も何度も繰り返されるセリフで、大切な局面で仙石(野村萬斎)を勇気付けたり?もするんだけど……
「才能がある」っていう言葉はとても無責任で押しつけがましいと感じてしまう。
単なる向き・不向きの話ではなくて、音楽や美術などの価値基準が万人に分かりづらい分野では、特に慎重に扱わなければいけないものだと思っている。
当人がどんなに努力して手に入れた能力でも「才能」の一言で片付けられることはままあるし、才能がなかった大多数の夢も勝手に背負わされてしまう。
ましてやその道のプロを目指している人間にかける言葉としては最悪で、下手をすればその芽を枯らしてしまいかねない。
そんな言葉を不用意に教員が使うことに非常に違和感をもったのです。
そんなわけで序盤でめちゃくちゃ引いてしまって、なんだかとても冷静な気持ちで観賞してしまった。
頻繁に回想シーンが挟まって過去と現在を行ったり来たりするんだけど、現在の亜美と雪絵の2ショットは「先生の夢を私に押し付けないで」と仲違いする場面しかなく。それなのに亜美が行方不明になった雪絵のことを「素敵な人だから探してほしい」と依頼するのは、(分かるけど)ちょっとこの子情緒不安定すぎやしないかと思ったり。
記憶から人の悪意を読み取ってしまうため人間不信の仙石に、「素敵な人だっているよ」という亜美の働きかけが必要なのだとしたら、もっと亜美が雪絵を慕っていることが明確に示される描写がないと足りないのではないかと感じた。見てる側には、才色兼備で将来を有望視されていたが事故で弾けなくなった、という一般的な情報しか与えられてないので。もっとパーソナルな描写が欲しかったなあ。
仙石と丸山のやりとりは、いがみ合いつつもお互いの一番の理解者なんだということが言葉の端々から感じられたし、仙石がインチキと呼ばれることに一番憤っているのは実は丸山なのだという描写もよかった。
主要コンビに長い歴史や信頼関係が感じられるのは古沢良太作品の好きなところ。
脚本・古沢良太の作品はいくつか見たことがあって(『探偵はBARにいる』とか『リーガル・ハイ』とか)、
好きなところは色々あるんだけど、たまに説教っぽく聞こえることがあって。全部言い過ぎちゃうというか……。
最終的には丸く収まって、ハッピーエンド風ではあるんだけど、
雪絵の前に犠牲になっていた二人は報われないまま(劇中でもほぼ登場しない)だし、丸山の借金は残ったままだし、マイティーズは復活するのかも分からない。
全体的にモヤッとしたまま終わってしまった感じがある。
でも野村萬斎を映画で見るのは『のぼうの城』以来だし、カチッとした硬めの青みがかった映像や仙石の部屋の熱帯魚などはいかにも推理ものっぽくてとても好きでした。